コウホ地9

#コウホ地 (9)
おばさん
  • おばさんが2人畑のはしで休んでいた。
  • 亀谷というところ。
  • テントをはるところを探してます、と言ったら、ここにはりなしゃい、と言った。
  • 去年までは畑をやっていたらしい。
  • こっそり似顔絵をかいていたら突き飛ばされた。だから全然似てない。
  • 枯れ草を集めて、寝所を作ってくれた。
  • ふかふかしてめちゃくちゃ快適だ。
  • テントに1センチくらいの穴があいていた。昨夜イノシシにあけられたらしい。色々な動物がテントのまわりをウロウロしていた気がする。
  • 今日は一日中テントをはる場所を探していた。本当にはりたい場所を見つけること、それはやはり難しい。もう日が暮れる。


小川てつオ
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丸井隆人

#1年後のコウホ地 (Report-9)
ここはなつかしいところだ。深夜、彼が寝ているところに突然お邪魔して、筆談したり、ニセホタルに興奮したりしたからだ。そういえば彼は『こんにちわテント』を始めてから早寝になったと言っていた。テントじゃー暗くなったら何もやりようがないから当然といえば当然のことだけど、それは聞いたときには「そっか、そうなるよなー」とえらい感心したことを覚えている。
最初、コレは防犯灯の横のブロック(写真手前)のところで書こうとおもったのだけれど、日差しが強いので彼がテントを張ったところまであがって書いている。
さすがにもうおばさんが用意してくれたという枯れ草のフカフカベッドはない。でも、ここに座って書いていると、生草の匂いがプーンと薫って、ここまで上がってきた甲斐があったな〜とつくづく思える。
ここの敷地は今もスケッチとほとんど変わっていない。<こえだめ><干し草の山>もほとんど同じところにあるよ!
コウホ地9
テントは黄色い△のところにあった。チャリのカゴには『こんにちわテント』。
・・・と書いていたら、下の道をおばさんが草刈り機をもって歩いてきた。
小竹さん 「こんにちはー」とあいさつすると、「あれまー、小川さんですか〜」と聞かれ、ちょっと苦笑。彼の友人で、去年彼がテントを張ったところを見てまわっていると説明して、下におりて彼のスケッチブックを見せた。
おばさんはスケッチブックをめくりながら、「あら、矢吹さん」とか言ったりしてるうちに、「あら、これ、私だわ」と言って自分の絵が描かれたページを恥ずかしそうに指さす。それで、そのおばさんの名前が小竹さんであると判明。てつオ氏のことはよく覚えていて、手紙や写真も送ってくれたと嬉しそうに語ってくれた。てつオ氏が絶対喜ぶだろうと思って、一枚写真を取らせてもらう。でもスケッチの絵と全然似てないよな〜(と、このときは書いたが、今、改めて写真と較べると、似ているね!)。
小竹さん
「あれまー、小川さんですか〜」と小竹さん。写真を撮るとき、女性らしく身なりを整えていた。
写真を撮ったあと、しばらく小竹さんからは(てつオ氏も書いている)蛍の話を聞いた。昔はホタルが群れになって驚くほど飛んでいて、毎年、それはそれは感動だったらしい。今年は1、2匹見ただけで、今や本当に神秘的なものになってしまったと残念がっていた。
僕は小竹さんとしか話していないけど、てつオ氏が書いてるように、ここの集落はとてものんびりしていて<居心地がいい>ような気がする。小竹さんと話してるだけでも、そんな気持ちになってしまうものだ。目の前の川の水はまだそんなに淀んでるようには見えないのに、ホタルはいなくなってしまった。こうした気持ちのいい集落も、まだ豊かそうに見える土地からどんどん失われてしまっているのだろうか。
帰り際、遠くで草を刈り始めた小竹さんに向かって、橋の上から手を振ると、気づいて手を振り返してくれた。僕はいつになく大きな声で、小竹さんに「サヨーナラー」と言って、再びチャリのペダルを踏み始めた。それは本当に久し振りに出した大きな声だった。

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