東京オリンピックエンブレムの選考方法案
甲子園とAKB48総選挙スタイルで

白紙撤回された2020年東京五輪のエンブレムを選び直す応募が12月7日に締め切られた。今回の応募はプロアマ・受賞歴の有無といった経験は問わず、広く一般市民に門戸が開かれたようにも見えるのだが、審査の流れは最終審査までエンブレム委員会、組織委員会、事務局に委ねられ、前回応募と大きく変わるものではない。前回の失敗で当選作についてだけでなく、審査そのものに疑義が挟まれたことへの自覚は足りているのだろうか。あるいは選考委員の首さえ挿げ替えれば済むと思っているのだろうか。

今回の応募においては一般市民が選考される可能性を含むだけに、前回のような問題が起きたときの炎上袋叩きがより一層懸念される。佐野研二郎氏のようなプロフェッショナルの立場なら、プロとして覚悟の上というところもあるのでやむを得ないと言えないこともない。しかし、一般市民が同様の立場に晒されたとき、エンブレム委員会はそれを守ってやると言える度量と責任感を持ち合わせているのだろうか。仮にあったとしても炎上が起きてしまってからではもはや守る手立てはない。前回委員会のようにただ逃げ隠れして騒ぎが静まるのを待つだけというのが関の山だろう。

では、どうすればその責務を果たせるのだろう? 私はこのエンブレム選考において委員会はその職責をあからさまに放棄すべきだと思っている(新国立競技場コンペの方は安全性の問題を伴うので放棄されては困るのだが)。具体的には選考を国民に委ねるという国民投票のような形だが、間に幾つかの仕掛けを用意することで、資金繰りの問題を解消し、東京五輪を都民だけでなく広く日本全体で参加型のお祭として楽しめる場にできるのではないか。また、前回選考で露呈した広告主導の価値観から新世紀の価値観へ。世紀を跨いで20年目を迎えようとするのだから、そろそろ新しい価値観を国民全体が共有・実感できる場として東京オリンピックを活用していこうではないか。

以下に提示するのは、その仕掛けを加えたエンブレム選考方法案である。応募締切後にこんな案を出されても…と思われるだろうが、二度目の失敗が起きないとは限らない今の組織体制である。そのあとのことを今から考えておいても無駄とは言えないかもしれない。

1)出品料は1万円
2)一次審査は都道府県地区予選
3)審査方法も投票対象に
4)最終審査はAKB48の総選挙スタイルで
5)賞金とオリンピックチケット特典

1)出品料は1万円
まず今回の門戸を広げたコンペで疑問だったのは出品料を取らなかったことである。出品料を取ることで、応募総数を減らすことが出来るし、いい加減な作品の出品を抑制することもできる。また、その利益を運営費や賞金に回すこともできただろう。
出品料は切りよく1万円。1万円という金額はそれなりに重たく、その重さ分の付加価値は決まったエンブレムや審査自体にも付いて回る。その一方で、現在は一人(一組)一点までのルールとなっているのを出品料さえ払えば何点でも応募できるようにしたらどうだろうか。個人と団体と両方で出品したい場合もあるだろうし、個人の中で二案あって決め倦ねているというのなら、両案を審査に委ねてみるというのもデザイナー育成の一端にはなるはずである。

2)一次審査は都道府県地区予選
応募先はエンブレム公募事務局ではなく、47都道府県の自治体で窓口を設け、そこに申し込む形を取る。出品者は住民票を持つ都道府県のウェブサイトでしか申し込むことはできない。審査方法は各都道府県自治体に委ね(これについては次項で解説)、最優秀賞を決める。受賞作はそのまま都道府県代表エンブレムとして公開前に商標登録し、その都道府県内につき、最終エンブレムと並行して利用可能なものとする。
地区予選優勝賞金は2020年に掛けて¥202,000=20万2千円。
各都道府県の特設サイトで最優秀作と共に優秀作20点を出品者プロフィールに作品コンセプトを添えて掲載(出品者の掲示希望情報のみ)。また、それ以外の落選作も画像のみサムネイルサイズで一覧表示させる。

3)審査方法も投票対象に
都道府県大会では審査方法は統一せず、各都道府県自治体に委ねてみてはどうだろうか。県出身の著名デザイナーを招いて審査するも良し、県内で県民投票するも良し、さらに市町村自治体を巻き込んで小さな単位で熟議するも良し。今、世の中では枯渇した審査方法自体が問われているのだから、47都道府県それぞれのアイデアを持ち寄れば何か画期的な方法が見つかるかもしれない。
そして、全国大会のエンブレム選考時には合わせて47都道府県の審査方法でどれが一番良いと思ったかも投票できる欄を設け、その全順位を公表し、運営資金の配分もその結果に合わせて上下するようにする。人口比率が問題視されるかもしれないが、エンブレム選考において県民意識の反映があったとしても自治体の審査方法に対しては公務員以外は冷静に判断するはずである。

4)最終審査はAKB48の総選挙スタイルで
47都道府県代表作品の最終審査はAKB48の総選挙スタイルで、一人一票ではなく、一口1000円で何票でも投票できるようにする。投票入力項目は
①投票者氏名(代理の場合、代理の氏名も)
②メールアドレス(当選通知用)
③現住所(住民票のある都道府県も別途選択)
④生年月日
⑤No.1エンブレム(出品者名)
⑥No.1審査方法(都道府県名)
⑦観覧希望競技(プルダウンで選択)
でクレジットカード決済によるネット投票、もしくは役所等で用紙受付する。
一定の投票期間を設け、その間は総選挙の政見放送のようにテレビ、ラジオ、ネットを通じて47都道府県の代表出品者と知事がPR。出品者は作品コンセプトを、知事は審査方法を規定の時間内でプレゼンする。特設サイトでも作品、展開図、出品者プロフィール、コンセプトと共にプレゼン動画を常時チェックできるようにする。イベントとして盛り上げるためには選挙期間の途中で中間発表があってもいいかもしれない。また、その間、パクリ疑惑を指摘された作品は一定の調査を行い、それが明らかな場合は出品取消しとする。
投票結果は優勝作品だけでなく、エンブレム、審査方法の全順位も発表。
また、各都道府県別の投票総数と応募総数も公表する。

5)賞金とオリンピックチケット特典
優勝者には賞金¥2020,000=202万円+希望五輪競技の関係者ペア席3枚。
8位まで入賞にも¥202,000=20万2千円+希望五輪競技の関係者ペア席1枚。
また、ピッタリおまけ賞として、エンブレムと審査方法の順位が一致した都道府県にも出品者に¥20,200=2万2百円の賞金+希望五輪競技の関係者ペア席1枚(知事にも)。
各自治体は順位に応じた支援額がエンブレム組織委員会から配給される。

そして大事なのは投票者にも特典があることで、1位優勝出品作に投票した投票者にも観覧希望競技の関係者ペア席が当たるようにする(人気競技の場合は抽選)。これによって投票のモチベーションは上がるし、希望競技を変えて何枚も投票しようとする人も出て来るはずだ。また、優勝作品の投票者にしか当たらないということで、市民が個人の好みだけでなく、どれが優れているかを考えて投票することになる。これらの投票行為によって、人々のデザインへの感心、また、通常の議員選挙への感心も高まってくれれば言うことはない。

http://m-louis.tumblr.com/post/134780914184/

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