BLUE DEVILS


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        私はいつも人生は一種のブラックコメディだと思ってきました。
 
        こういうことのおかげで、道を歩いて行く私の前に山になった青い悪魔達が現われて、
        ジャズを演奏し、踊り、コーラスで歌うウッディ・アレンのスタイルのミュージカルを
        演出しても、全然驚かない自信があります。
        その上、実際に私の人生は次のように青い悪魔達が掌握しています。

 

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        第一の悪魔、Blue Devil。紫林雨が出発したクラブの名前です。
        ライブハウス、またはライブクラブに行ってみたことがあおりですか?
        ダンスクラブやテクノクラブ、ナイトクラブとは全然違うところです。
        カフェやバーのような感じのお店に小さくても大きくても舞台が据えられています。
        スタンディング公演を専門にしているクラブは初めからテーブルがないこともあります。
        たるんだ感じと緊張感がお店の中に一緒に流れていて、建築材、ビール、タバコ、
        地下の匂いが混ざり合った「クラブ」の匂いがあります。不思議なことはクラブの中に
        入って行くと、時間の観念が若干曖昧になるという点でしょう。
        異系異界のような感じ、まさにそれでしょうね。
        今、ブルーデビルがあったところには全然スタイルが違う趣向を懲らしたカフェが
        入っていますが、ブルーデビルは95年から97年まで約3年間、弘大前でかなり名声の
        あったライブハウスです。
        ブルーデビルは他のクラブに比べて相当に快適な室内とインテリア、それだけでなく、
        センスのあるトイレまで整えていました。天井も高い方で、あぁ、このように一つ一つ
        上げて話してみるからとても恋しいです。今は行くことのできないことが心が痛みます。
        そして、本当にたくさんの人々がいました。
        ピピバンド、ピピロングスターキングのパク・ヒョンジュン氏とかカン・ギヨン氏、
        コ・グマ氏、時々はイム・ヒョンジョン氏やピピバンドのパク・ユンジョン氏もみえて
        キム・ドクス先生に初めてお目にかかったのもこのクラブでのことです。
        数多くのミュージシャン、ジャーナリスト、評論家、映画人、そして各種の方面から
        集まった人々、ことばばかりのニセモノ達も、ことばだけの詐欺師もブルーデビルに集まりました。
        私達は木曜日チームから始めて、金曜日、土曜日に昇進し、この場所で演奏しました。
        いえ、私達が上手くて昇進したというよりは、元来のメインチームの人達が事情があって
        出られなくなり、運良く代わったと見るのが当たっているのですが、私達がデビューできたのも、
        元来土曜日の演奏チームであった You And Me Blue がしばらく前に辞めたのを知らず、
        土曜日に彼らの演奏を聞きに来て、とんでもないチーム「みにくいあひる」(みにくいあひるの子では
        ありません)の演奏を聞くしかなかった映画「花を持つ男」の演出チームのお陰でしょう。
        1時間が少し過ぎる演奏のために、私達は週の内1回クラブに集まり練習をし、一緒に食事をし 、
         一緒にビールを飲み、話をしました。演奏をする日は友達も遊びに来て、時間が経つと、
        みにくいあひるの演奏を聞きに時間を合わせてクラブに来る人達もできました。
        まだ、私の職業に適応が完成していないゆえに、紫雨林の公演に多くの人々がチケットを
        買って聞きに来られるのを見ると、ありがたく思うけれど、余りにも不思議なのです。
        当時もみにくいあひるを見に来る人々を見ても本当に不思議でした。
        万病の経営難悪化でブルーデビルが門を閉めなければならなかった時、舞台に立っていた
        ミュージシャン達がみんな集まって、夜が明けるまで一緒にクラブを整理し、夜が明けるまで
        別れを惜しみました。私の人生で一番幸福で平和だった時期の中の一つの章がこのように
        ブルーデビルを背景にして過ぎて行きました。

 

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        第二の悪魔、Blue Devils。
        あなたは憂欝症についてご存じですか?
        憂欝症を意味する英語はとても多いですね。ありふれた病気だから多くの人々がかかるから
        なのでしょう。その症状の一つが Blue Devils 青い悪魔です。
        私はかなり幼い時から憂欝症と共に生きて来ました。憂欝症はちょうど風邪のように
        ありふれているけれど、いろいろな異なった悪い情況を招くこともあり、治療に物凄い
        ジレンマがある疲れる病です。体に生じる病に1期、2期、3期という進行段階が あるように、
        心に生じる病もそうなのです。
        末期の「何もしない」状態の憂欝症患者達はどこかに閉じ篭もって、それこそ何もせず、
        何も食べず、人間のものではない生活をしていて、結局、栄養不足やその他様々な理由で
        死亡するのです。
        しかし、末期の憂欝症まで行く道はとても困難な旅程です。末期まで行くには常にどうしたら
        うまく死ねるかとだけ思い巡らす深刻な自殺衝動段階を経なければならないためでしょう。
        手首を切り、暖かいお湯で沐浴をするとか、34階からさっと飛び降りたり、難しいけれど
        性能の良い銃を一挺求めたり、とんでもない薬を買ってウィスキーと一緒に飲んでしまったり、
        様々な方法を考えることができます。注意すべき点は、このことが、ただのある種類のデモで
        終わる自殺未遂で終わってしまったらいけない点です。そのために、この段階で無事に生存し、
        次の段階である「何もしない」に移るのは本当に大変なことです。
        しかし、本当に困難なことは憂欝症に苦しんでいる患者を世話する精神科の医師や心理学者達です。
         「深刻な自殺衝動」段階の患者を軽く叩くことも大変だが、飲んでも頭に痺れが出て馬鹿にならない
        薬を処方するのも不可能で、特に腹の立つことは「何もしない」段階の患者なのです。
        懸命に長い間、骨を折って治療して少し回復していたのが「深刻な自殺衝動」段階に入り、
        病院のシーツを裂き、首をくくったり、フォークで自害したり、困難な行動を続けるからです。
        「深刻な自殺衝動」段階や「何もしない」のようなひどく極端な状態は本当に「病」と言える
        程度ですが、病の程度ではないにしても、憂欝症は吐き気や鼻かぜのように本当に苛立たしくなる
        奴なのです。私達の国の成人の4名中1名程度は憂欝症を持っているといいます。特に青少年では
        その比率が更に高く、最近の研究に従えば、男子学生34.4%、女子学生47.5%が憂欝症の症状を
        見せており、男子学生17.4%、女子学生20.6%は治療が必要な状態で、男子学生3.3%、
        女子学生7.3%自殺まで企図した経験があるというのです。
        私の場合、4、5月頃には定期的に、他の時期には気分によって此奴の訪問を受けているので、
        その訪問の時期には桜見に行くことも、ろくに恋愛をすることも、何か良い創作を作り出すことも
        できません。特に今年は様々な理由でとても強靭な青い悪魔の奴が私を探して来たせいで、
        「11」という歌を作曲し、録音した2001年6月頃には 体を動かすのも難しいくらいにひどい状態に
         陥ったりもしました。

 

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        しかし、恐らく、多くのロック、ブルース、ソウル、ジャズのミュージシャン達が共有している
        要素がBluesと「Blue Devils」であると思います。血管にブルースが流れてこそ、良い曲を
        作ることができ、心が Blue Devil で満ちていなければ、良い音を出すことはできないからです。
        そういう意味で、私が青い悪魔達と一緒に生きて行かなければならないことは、一種の反対給付だと
        思います。愛するものを職業として得た幸運に対しての反対給付。
        やはり、人生はプラス・マイナス、ゼロです。


        あなたがミュージシャンでなくても、この青い悪魔の魔の手から完全に安全ではありません 。
        何故か、すべてのことが煩わしく、毎晩、三、四時間ごと眠れなかったり、食事することも
        意味なく感じられて、何もしたくなく、ただ、悲しくて無気力なだけなら、やはり青い悪魔が
        周辺に座って笑っているのではないかと疑ってみて下さい。




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